FE 35mm F1.4 GM で春の星空を撮る
-2021年3月揖斐谷-
SONYから新しい単焦点レンズ FE 35mm F1.4 GM がSONYレンズの最高峰「GM」シリーズで登場した。 さて、このレンズを星空撮影で使用したらどうだろうか。まずは簡単なインプレッションを紹介したい。 星空撮影の標準レンズは24~28mmとこれまで言ってきた印象からは、35mmという画角は星野撮影にはやや狭いかもしれないと思いながらも、漠然と超広角レンズで星野を撮るのではなく、テーマを絞った星景撮影や星野撮影では新しい可能性を秘めているとも言える。 35mmといえば、かつては広角レンズの中心だった焦点距離。今では24mmが広角レンズの中心という印象があり、35mmという画角を星野撮影で使う機会は少ないかもしれないが、いろいろな使い方のできる焦点距離でもある。ちなみに金生山ヒメボタル撮影では最も汎用性の高い焦点距離だ。 今年初めての黄砂飛来で車のフロントガラスは泥だらけ。快晴にもかかわらずどんよりと曇ったような昼の空。せっかくの新月の夜だったが、こればかりはどうしようもないと諦めかけていたが、気象庁の黄砂情報によると夜遅くなると黄砂も少しずつ薄まるらしい。雲はなさそうなのだからと、ダメで元々とカメラを持ち出してみる。 深夜になると夜空の明るさも落ち着いてくるのが常だが、この夜は黄砂の影響でいつまでも透明度はよくなかった。いつまでも遠くの町の明るさを空が拾っているような印象。仕方がないので、ケンコーのプロソフトン・クリアとマルミのスタースケープフィルターを2枚重ね。ケラレを心配したが、大丈夫のようだ。ソフトフォーカスフィルターのプロソフトン・クリアは従来のプロソフトン(A)と比べてソフト効果を約半分に抑えられている。最近では使用頻度が高いフィルターである。スタースケープは光害カットフィルターで露出倍数1.2(1/4段)を確保していて使いやすい。 シーイングが悪く1枚画像で作品化とはいかないので、赤道儀で恒星追尾撮影した8枚を後処理として加算コンポジット。ダークフレーム4枚でダークを引いている。 作例を下に掲げた。四隅の収差はサジタル方向もタンジェンシャル方向も大変良く抑えられている。超広角レンズの FE 20mm F1.8 G はサジタルコマ収差が見られないのに対してタンジェンシャル方向の収差が少々気になったが、このレンズは両収差ともよく押さえられている。これは35mmという画角がプラスに働いている、ということなのだろう。作例では1段絞っているが、実に見事な描写だ。 中央に「ししの大鎌」、一等星のレグルスがひときわ明るく輝く。右下にかに座の宝石箱「プレセペ星団」が沈もうとしている。 SONYのEマウントの広角~超広角レンズは FE 24mm F1.4 GM 以来、FE 20mm F1.8 G 、FE 12-24mm F2.8 GM と立て続けに優れたレンズが発表されている。しかも比較的軽量・コンパクト。何か技術的なブレイクスルーがあったのだろうか、などと想像するだけだが、星空撮影には大変嬉しいことである。さて、次はあるのか、、、? 2021年3月18日01時18分撮影 α7M3+FE 35mm F1.4 GM、35mm、ISO1600、f2、30秒×8枚、後処理としてダークフレーム減算後に加算コンポジット、PRO1D プロソフトン クリア(W)+StarScapeのフィルター2枚重ねで使用、長秒時ノイズリダクションなし、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影、カメラ内インターバル撮影機能+ワイヤレスリモートコマンダーRMT-P1BT使用 |
中央(100%)
左下(100%)
左上(100%)
右下(100%)
右上(100%)
薄明が始まる前に東の空に夏の天の川が横たわり始めた。季節は変わり、今年初めて夏の大三角を見た。 35mmという焦点距離は夏の大三角を収めることはできるが、わし座が一部欠ける。またアルタイルに寄り添うように輝くいるか座もここにはない。あくまでも夏の大三角を撮る、ということで納得する他はない。 北十字の交差点サドルも、はくちょう座β星アルビレオも識別できるが、この時期はまだ高度が低いためシーイングは悪い。これからの季節に期待しつつ、夏の星座が見られたことに満足して撤収した。 それにしても寒い明け方だった。 2021年3月18日03時22分撮影 α7M3+FE 35mm F1.4 GM、35mm、ISO1000、f2、30秒×8枚、後処理としてダークフレーム減算後に加算コンポジット、PRO1D プロソフトン クリア(W)+StarScapeのフィルター2枚重ねで使用、長秒時ノイズリダクションなし、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影、カメラ内インターバル撮影機能+ワイヤレスリモートコマンダーRMT-P1BT使用 |